短編から始まる、幸福な出会い
短編というものを初めて面白いと思ったのはいつだっただろうか。思い返してみると、それは夏目漱石の『夢十夜』を読んだ高校生のときだった気がします。『夢十夜』は、漱石の『坊っちゃん』や『三四郎』とは全く違う、シュールで短い幻のような話でした。ひとつの話がふいに終わり、名残り惜しいような、宙ぶらりんの気持ちのまま次の話に移る。短編集とは、そんな不思議な余韻の連なりみたいなもので、できあがっているのかもしれません。
『夢十夜』に始まって、国外問わず心に残る短編集にいくつも出会ってきました。素晴らしい作者との出会いも、短編がきっかけだったということも多いのです。『停電の夜に』のジュンパ・ラヒリや、今回ご紹介するエイミー・ベンダーもそのひとりです。
さて、今月の月替わりメニューは、フルーツ・ティー。いく種類もの果物がかもし出す香りのハーモニーは、とっておきのストーリーがつまった短編集に似ています。
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●まっこリ〜ナ Profile
編集者。出版社勤務を経て現在フリーランス。本がくれる愛のチカラを糧に生きる日々。趣味は草花園芸、透明な海でのスノーケリング、ヨガ。夢は沖縄に移住してマンゴーの木を植えて暮らすこと。
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